【おすすめ小説】『人間失格』(太宰治)の書評

小説から実用書まで書評をします。

今回の1冊は、『人間失格』です。
著者は太宰治です。

太宰は戦後の無頼派の象徴的な作家です。
反俗無頼を掲げる作家で、最期は愛人と入水自殺を遂げました。

死に生きた作家という印象です。

『人間失格』の概要

『人間失格』

『人間失格』
没入感
(4.0)
メッセージ
(4.0)
死に行く度
(5.0)
総合評価
(4.5)

『人間失格』のざっくりあらすじ

物語は一貫して、主人公である葉蔵の語りとして進行します。
葉蔵は東北地方の名士の末息子です。

子供の頃から「他者への恐怖」、「幸福とは何か?」、「生きるとは何か?」
葉蔵は自らの心情が常に浮いています。

葉蔵は道化を演じることで他者を転がすことに長けています。
実のところは他者の気持ちが分からない空虚な存在です。

葉蔵が中学に進むと「竹一」というクラスメイトとであいます。
容姿端麗で他者を惹きつける葉蔵に対して、学級で最も貧弱な竹一。

竹一は「葉蔵が道化を演じている」と葉蔵の正体を見破る唯一の存在です。
竹一は「女が寄ってくる」と葉蔵の将来を予知します。

葉蔵はその後、堀木と出会い「酒」、「淫売」、「左翼運動」と非合法な活動に溺れます。
女中と自殺を試み、自殺幇助罪に問われるなど葉蔵の人生は大きく傾いていきます。

転と結のキーワード
転:酒・薬・女、破滅的な人生
結:老婆との終生

『人間失格』のここが凄い!

空虚感

葉蔵を通じて、人間の本質が無機質であることを痛感します。
「人間は何者ではない」という空虚感を与えられます。

葉蔵からは空虚感と共に、「生への諦念」が表されます。
「なぜ生きるのか?」という究極の問いに「諦念」という形で答えを出します。

本作は葉造が、そこへ行きつく過程を空虚感で表現しています。

普遍的に描く

「なぜ生きるのか?」という問いとそこへの「諦念」に対して普遍的に描かれます。

人間失格への烙印まで、それを体験したことのある者とそれを自覚した者にしか分からないであろう事象。
本作品が評価されるのは「その事象を如何に伝えることができたか」という要素も含まるのでしょう。

『人間失格』の論評

論評:1

「葉蔵は無機質な存在なのか?」

葉蔵の一生は確かに孤独なものだと思います。
空虚でとりとめのない葉蔵の思考へ共感することは容易ではありません。

ただ「彼の心は無機質なのかと問われる」と疑問です。
「なぜ生きるのか?」を愚直に問い続ける葉蔵はハイデガーに通じるものがあります。

死を意識することでより生を認識することができるという考えは酷似しています。

葉蔵(太宰)は実際に死にいくことを決断してしまいました。
そこまでの過程は無機質なものであると断定できません。

 結論

『恥の多い生涯を送ってきました』という一文はとても有名です。
太宰の遺作であり、書き終えた一か月後に愛人の山崎富栄と入水自殺を果たしました。

酒、女、薬に溺れて、堕落していく人間の様。
「人間失格」の烙印が押される瞬間は痛快な面があります。

 

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